2025年4月21日の夜、ニューヨークダウは一時1300ドルを超えて暴落しました。原因は、トランプ大統領が金利や金融政策をめぐってFRBパウエル議長に強い圧力をかけたことが、不安材料となったようです。
FRBパウエル議長は2022年から金利引き上げを開始し、2024年12月ごろには難しいインフレ対策に直面していました。市場は利上げ停止や利下げへの転換を織り込み始めましたが、インフレは粘り強く、金融政策の出口は見えていません。そんな中で、アメリカ経済の脆さと世界経済の地殻変動が同時に進行しています。
こうした動揺は、単なる一時的な景気後退ではないかもしれません。歴史を振り返ると、覇権国家の変遷には共通のパターンが見られるのです。
トランプ大統領はなぜ“焦って”いるのか?歴史のサイクルで見る今
過去500年を見渡すと、覇権国家は周期的に入れ替わってきた。ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、そして20世紀以降のアメリカ。アメリカの覇権の始まりは、第一次世界大戦後のドル基軸通貨体制と、第二次大戦後の軍事・経済支配によって確立された。しかしその後100年が過ぎ、いまアメリカは歴史のバトンを握り続けられるかという岐路に立たされている。
ドルと軍事力、そしてAI:三本柱の揺らぎ
米国の覇権は、大きく分けて3つの柱に支えられてきた。
- ドル:世界の基軸通貨として、米国債は世界中の中央銀行に保有され、国際取引の多くはドルで行われてきた。
- 軍事力:世界最大の軍事予算を背景に、アメリカは“世界の警察”を自任してきた。
- テクノロジー(現在はAI):ITバブルからGAFA、そして生成AIの覇権と続く技術的リーダーシップ。
しかし2020年代に入り、これらの全てに揺らぎが生じている。BRICS諸国による脱ドル化の加速、ウクライナ戦争や中東情勢への不干渉化、そして中国によるAIと量子技術の急追。かつての「圧倒的優位」が「相対的優位」に変わりつつあるのだ。
トランプの動きが示す“物語の終わり”
トランプ前大統領が進めている政策には、一見すると“アメリカを再び偉大に”という保守的スローガンがあるが、その実態は「アメリカ中心の秩序の再定義」に近い。NATO軽視、多国間主義の否定、関税政策、さらには半導体・AIの囲い込みなど、既存のグローバルルールから一歩引く姿勢が顕著だ。
この姿勢から透けて見えるのは、“アメリカはもはやルールメーカーではいられないかもしれない”という無意識の焦燥であり、冷静な撤退戦とも言える。トランプの過激な言動の裏に、アメリカという「物語」の限界がにじんでいる。
それでも米国はあと数十年は覇権を保つ?私の考え
ここまで不穏な空気を描いてきたが、私はそれでもアメリカが当面の間、あるいは数十年は覇権国家であり続ける可能性が高いと考えている。その理由は、
- 民主主義の柔軟性と、イノベーションに対する土壌の広さ
- 世界最大の消費市場と、資本の流動性
- 通貨・金融・技術・軍事の全方位的な“強さのバランス”
だ。
覇権が崩れゆくプロセスは一夜では起こらない。むしろ“覇権の衰退”とは、覇権国自身が認識を持った時から始まる緩慢な過程であり、アメリカはその知恵と適応力によって、まだその椅子に留まることができるはずだ。
新NISAとインデックス投資が抱える「見えないリスク」
日本国内では、新NISAの導入により個人投資家が急増した。特にS&P500や全世界株式インデックスへの資金流入は凄まじい勢いだ。しかしその多くが「とりあえず米国株なら安心」という空気感に支えられている。
これはまさに“靴磨きの少年”現象——つまり、誰もが安心だと思った瞬間こそ、リスクが最大化するタイミングでもある。覇権国家の前提が揺らいだとき、インデックス投資が過去のパフォーマンスを再現できる保証はどこにもない。
それでも備える人が強い:覇権崩壊シナリオと未来投資戦略
重要なのは、「信じる」ではなく「備える」こと。
- 米国偏重を避け、地政学的分散を取り入れる(新興国・コモディティ・金など)
- テクノロジーと通貨の進化に対して、自分自身も学びを止めない
- 投資だけでなく、自分のスキル・人的ネットワークといった“非金融資産”の強化も
未来は予測できないけれど、視点を広げておけば、世界がどちらに傾いても生き残れる。
覇権の終わりが近いなら、それは新しい秩序の始まりでもある。 信じすぎず、恐れすぎず、未来と向き合うためのヒントを、新NISAの中に見つけていこう。