2025年に入ってからも好調な相場が続く中、エネルギー関連の高配当株として人気を集めてきたINPEX(1605)。しかし最近、その株価がやや重たく感じられる展開が続いています。本記事では、なぜINPEXの株価が停滞気味なのか、そしてそれでも投資対象として注目される理由について整理してみます。
株価が重たい4つの要因
1. 原油価格の下落
INPEXの収益構造は、原油や天然ガスといったエネルギー価格に大きく依存しています。2024年末から2025年春にかけて、国際的な需給の緩みや中国経済の減速懸念から原油価格がやや下落。これが業績の先行きに対する不安材料として意識され、株価の重しとなっています。
2. 円高の進行
石油取引は米ドル建てで行われるため、為替の動向も大きな影響を与えます。足元では日米金利差の縮小観測から円高が進み、INPEXの収益見通しに対してネガティブな影響が出ています。
3. 業績予想の下方修正
2025年2月にINPEXが発表した来期(2025年12月期)の業績予想では、前年比で22.8%の減益見通しが示されました。増配傾向を続けてきた同社にとって、保守的な見通しは投資家心理に一定のブレーキをかけた形となっています。
4. 中東リスクの高まり
中東地域における地政学的リスクも、INPEXのような資源関連企業にとっては無視できない要因です。2025年初頭から続くイスラエルと周辺国との緊張、イラン情勢の不透明感、紅海をめぐる航路の安全保障問題などが原油市場全体に不安をもたらしています。
INPEXはアブダビなど中東地域にも資産を持っており、情勢の悪化がプロジェクト進行や収益に影響を与えるリスクもあります。仮に輸送ルートの遮断や供給不安が現実化した場合には、原油価格が一時的に高騰する可能性もありますが、それは同時に不安定な収益構造を意味します。
トランプ関税ショックとその影響
2月下旬までは株価が下落基調を続けており、2月末には1,830円前後で反発。その後は一時的に回復し、4月初旬には2,130円台まで戻す場面もありましたが、そのタイミングで発生した“トランプ関税ショック”により、再び重たい展開となりました。
米国が発表した新たな関税措置には、エネルギー・資源関連品目への影響も取り沙汰されており、90日の猶予期間が設けられたことで、6月末頃の発効が見込まれています。現時点では詳細や影響度が明確でないため、市場では様子見ムードが強まっているのも事実です。ただし、万が一アジア圏との貿易に影響が波及すれば、INPEXの需要やプロジェクト採算性にも懸念が生じる可能性は否定できません。
今後の追加情報や各国の対応姿勢次第では、株価の再評価が急速に進む場面も想定されます。
それでもINPEXが注目される理由
1. 高配当利回り
2025年春時点での配当利回りはおよそ4.6%。利回りが魅力的な水準にあることで、配当目当ての長期保有を考える投資家にとっては依然として有力な選択肢といえます。
2. 割安感のあるバリュエーション
PER(株価収益率)は6.8倍、PBR(株価純資産倍率)も0.5倍台と、全体的に割安な水準にとどまっています。足元の材料が落ち着けば、再び評価が見直される可能性も。
3. 自社株買いと株主還元意識
INPEXは増配に加え、機動的な自社株買いも実施しており、株主への還元姿勢は非常に強い企業です。この点も、保守的な投資家にとって魅力の一つとなっています。
おわりに
INPEXの株価は一時的に足踏み状態にあるものの、その背景には原油価格や為替、業績見通し、そして地政学的リスクが複雑に絡み合っています。加えて、今後の政策動向や国際的な貿易関係にも目を配る必要があります。
とはいえ、高配当かつ割安な銘柄としての魅力は変わっておらず、長期目線で見れば依然として有望な投資先といえるでしょう。
今後の相場動向を見ながら、押し目を丁寧に拾っていく姿勢が求められそうです。